髪を切ってラーメンを食べた、そんな一日
最後に髪を切りに行ったのは9月。
そこから癌の再発があり、入院、外科手術、抗がん剤治療、放射線治療と息つく暇もなかった。
しかし、先日最後の抗がん剤治療も終わり、放射線治療も残すところあと4回である。
まだ終わっていないとはいえ、ようやく少し精神的、時間的ゆとりが出てきた。
抗がん剤の影響で髪が薄くなると聞いていたので、髪の毛はどうしようか悩んでいた。
ボウズにしてしまうと、抗がん剤の影響で逆に細かい毛がたくさん抜けてかゆいなどというネットの情報もあった。
そんなわけで、美容院なども行かず様子を見ていたのだが、私の使っている抗がん剤の場合、多少の脱毛はあるがそれほどひどく抜けるわけではないようだ。
触ったときの髪の質は、ゴワゴワした毛が全くなく、細いツヤツヤの毛ばかりだが、見た目的にはもともと薄かったのでたいして変わりないように見える。
ということで、昨日、美容院に髪を切りに行ってきた。
もっと薄くなるようなら左右と後ろを刈り上げて、トップも短めにしてもらおうと思っていたのだが、現状それほど変わりがなさそうなので、いつも通りに切ってもらった。
あと、息子も一緒に行って髪を切ってもらった。
耳にかかって鬱陶しそうにしていたのでスッキリしたと思う。
私が髪を切っている間に息子のことを見ていないといけないので、妻ももちろん一緒だ。
昨日は行きつけの美容院が予約でいっぱいで、二人して予約が取れたのが17時からだった。
二人とも髪を切り終えたのが18時過ぎ。
「今から家に帰って、ごはんを作る気力はないね」と妻と話し合い、外食をして帰ることにした。
近所のラーメン屋さんで、私が一番好きな塩ラーメンを出してくれる店に行くことにした。
注文は塩ラーメン、羽つき餃子、チャーハンである。
王道のこのセットも咀嚼、嚥下に難のある今の私にとってはチャレンジメニューである。

ラーメンはどうか。麺は食べられる。シャキシャキのネギともやしも食べられる。チャーシューはちょっと手強い。箸を使い、口の中の位置を少し動かしつつ咀嚼する。なんとか食べられた。
餃子は普通に食べられる。ただ、胡椒が入っていて舌がピリピリする。
チャーハンはかなり手強い。パラパラの美味しいチャーハンなのだが、そのパラパラが今の私にとっては難敵。
チャーハンを口に頬張ってはラーメンのスープも口に運ぶ。それでなんとか食べることができた。
最終的には完食。とても達成感のある食事だった。
味の方は絶対おいしいはずなのだが、味覚障害のため十全に味わえなかったのが残念である。
ところで、息子は普通のラーメン屋は初である。
食べてくれるか心配だったが、塩ラーメンを美味しいと普通に食べてくれた。
ちょっとずつ、いろんなお店にもつれていってあげたいと思う。
髪を切って、ラーメンを食べただけの土曜日だけど、そんな何ともない普通の土曜日が、とても愛おしく思えるそんな一日だった。