『百鼠』
『百鼠』 (ちくま文庫)
著:吉田篤弘
一角獣
百鼠
到来
『百鼠』目次より
「この目次で書いてみたい」という思いから出来上がった本。
表題作の「百鼠」は、天上でくらす朗読鼠のイリヤが一人称に興味を持ってしまう話。
百鼠は地上の三人称を司っており、朗読鼠は地上で作家が三人称の小説を書くときに降りてくる声を担当している。
そして「三人称法典」というものがあり、一人称や二人称を使うことができない。
なんとも愉快な設定である。
3つの話に共通しているのは、主人公がちいさな冒険ででること、人称についての話、そして雷である。
まったく違う話の様で、根底にあるテーマは同じなのだと気づかされる。
いずれも静かな文章で、美しい世界がつくりあげられている。