(大阪・中之島|国立国際美術館)細かすぎる描写に圧倒、バベルの塔
現在、大阪の国立国際美術館で開催されている、“ボイマンス美術館所蔵ブリューゲル「バベルの塔」展 BABEL16世紀ネーデルラントの至宝 -ボスを超えて-”に行ってきた。
建物自体からアート作品な美術館である。
アルゼンチン出身の建築家、シーザー・ペリの設計だそうだ。
中へ入り、地下へと降りていく。
地下1階でチケットを購入して、地下3階へ。
ほとんどは宗教画で、1400年から1500年代のもの。
剣で斬首され殉教したカタリナが剣をもっていることや、娼婦の館の象徴として描かれているものなど、解説は細かく説明しすぎてなくて、逆にポイントがわかりやすかった。
初めのほうはヒエロニムス・ボスの作品がメイン。
空想力に富んだ絵が多くて面白かった。
ボス作品の目玉として、「浮浪者(行商人)」と「聖クリストファロス」があった。
「聖クリストファロス」の中には水瓶の家や謎のバケモノから逃げてる小さなおじさんがいたり、なんとも不思議な世界観だ。
ボスからの流れを汲む人たちが現れ、空想的な絵がたくさん。
どの絵も面白かった。
ダ・ヴィンチもボスと年代的に近いという事実も興味深い。
面識はあったのだろうか?
そして、ピーテル・ブリューゲル1世。
彼も、ボスの流れを汲む空想的で不思議な世界観の絵をたくさん描いている。
「七つの罪源」、「七つの徳目」でも変わった生き物などがたくさんでてくる。
他にも「大きな魚は小さな魚を食う」、「金銭の戦い」、「野生人」などなど、不思議な世界観にどんどんと誘い込まれる。
「大きな魚は小さな魚を食う」で登場するキャラクター?が、今回の「バベルの塔」展のマスコットキャラクターにもなっている。
だが、それと同時にブリューゲルの絵で描かれているのはネーデルラント(現在のベルギーのあたり)の農村での生活の営みである。
そして、それは「バベルの塔」で描かれる、塔の周辺で生活している人たちの描写へとつながっていく。
「バベルの塔」は三枚描かれているそうだが、1枚目は現存していない。
2枚目はウィーン美術史美術館所蔵の通称、大バベル。
3枚目が今回展示されているボイマンス美術館所蔵の小バベルと称される絵である。
小バベルと言われるだけあって、実物は小さな作品だった。
約60×75cmの絵である。
近くで見るには列に並ばなければならなかったので、まずはロープの後ろから遠目で見たが、バベルの塔の下から上へ、古いレンガから新しいレンガへと色が変化しているところや、漆喰を運んでいるところが白くなっているところなどに感心した。
また最上部の造りかけの部分は、ローマのコロッセウム(コロッセオ)を参考にしているそうだが、確かに似ている。
少し先へ進むと、「バベルの塔」の300%の拡大複製があり、それをみて驚いた。
細かな人がたくさん描かれている。レンガ一つ一つが細かに書き込まれていて、下には割れたレンガまで書かれている。
塔の窓の様式は変化していき、滑車や機材なども細かく描きこまれ、塔の内部に赤い天蓋が見えている。
また塔の周りも生活する人たちが描かれ、細かく描きこまれた船があり、自然があり、島や建物がある。
300%拡大でこの細かさなのかと、ただただ驚くばかりだった。
先ほど遠目で実物を見たときには、気づかなかったことがたくさん。
実物では人は米粒よりも小さく描かれている。しかも1400人も描かれているそうだ。
拡大複製の絵をしっかりと見て、また解説なども読み、今度は列に並んで間近で実物をみてみた。
やはり細かい。
細かすぎる。
どれだけの心血を注げばこれだけの絵が描けるのか。
バベルの塔をつくっているところ、ということは神の怒りにふれ言葉が分かれる前である。
皆が同じ言葉をしゃべり、共通の目的のために力を合わせがんばっている。
なんだかその一体感のような、喜びや力強さや希望といったものを感じられる一枚だった。
出口の前には撮影ポイントもあった。
バベルの塔で描かれている人の身長を170cmと仮定すると塔の高さは約510mなのだそうだ。
それと東京タワー、通天閣が比較しておかれている。
ボスからブリューゲルの数々の絵。最後の「バベルの塔」。
お腹がいっぱいではあったが、地下2階の「風景表現の現在」もさらりと見た。
1400年、1500年代の絵から一気に現代へ。
何もかもが全く違う。
だが、これはこれで面白いなと、また別腹で楽しませてもらった。
最後は地下一階へ戻り大友克洋の「INSIDE BABEL」を見た。
大友克洋が「バベルの塔の内部構造を描く」をテーマにした作品だそうだ。
●ブリューゲル「バベルの塔」展
期間:2017年 7/18(火) ~ 10/15(日)
時間:10:00 ~ 17:00(金曜日、土曜日は21:00まで)
入場は閉館30分前まで
休み:月曜日 ※2017年9/18、10/9は開館
料金:一般 1,500円、大学 1,200円、高校 600円、中学生以下 無料
アクセス:京阪 渡辺橋駅から徒歩5分、地下鉄四つ橋線 肥後橋駅から徒歩10分・ 御堂筋線 淀屋橋駅から徒歩約15分など